醗酵され地蔵。「もろみじぞう」さんです。

羽前の国は狩川の冷岩寺のまえに立ってたお地蔵さんで、
お酒を造ったとき、そのもろみをひとすくいかけて上げるとよいと言われていたもの。
ほうぼうの家からこれが来るので
(むかしむかしは、にごり酒を各家でもつくってたので)
各地によくある「塩かけ地蔵」みたいに、からだじゅうがもろみまみれ。
むかし、この大量ぶっかけもろみが腐敗して、とんでもなく臭くなったので、
ある男が「お地蔵さんも難儀だろう」と感じて(ほんとは単純にくさいから)
キレイにそうじしてさしあげたところ、その一家がことごとく重い病気になったそうで
以後は、それをおそれて誰もそうじをしなくなったんだとさ。
もろみをぶっかけられっぱなしでいるのがダイスキだったと見えます。
鳴き声がカワイイ。「いどさん」です。

むかしむかしの国名でいうと、たねの国、
種子島に分布しているかっぱの仲間で、
種子島には、「かわのひと」あるいは「がらっぱ」と呼ばれている仲間もいますが、
こちらの「いどさん」もそんな仲間のおひとかた。
(「いどさん」という呼び名の語源はあんまり明らかじゃないそうなのですが
とりあえず、鹿児島大学の報告書には「井戸様」って用字があったので採っています)
お彼岸のころになるとうしみつ時に「ぴーぴー」と鳴き声をあげながら、
春には山からおりる、秋には山にのぼってゆくと言われていて、
(このあたりの鳴きながらお彼岸に往来する性質は、西海道に多いかっぱの生態)
「お彼岸の頃はそういう時刻に山や水辺に近づくな」と言われててたりしたんだソウナ。
鬼でもニコニコ現金ばらい。「こしき」さんです。

漢字で書きますと「賈市鬼」と書きますこちらさんは、
市場に現われたりする霊鬼。
人間とまったく変りのない様子で商売をしたり、
生活をしてたりするといいます。
(似たものに、市場でごまかされちゃう「市糴鬼」というのがありますが
これとは違って、ちゃんとした人間界の経済活動に混じって商売をしてるようです)
死んだ人間がそのまま
おんなじ顔、おんなじ風貌でまたこの世でワキワキ動いてるので、
どうした偶然のとりあわせか、うっかり生前の知り合いと
ばったり出遭ってしまったりすると、「おやっ」という事になってしまいますトヤラ。
吸血鬼が飲むかというと、飲まない。「けつしゅ」さんです。

生前に暴利をむさぼり、度をこした飲酒を行なったひとの霊鬼が
売りつくさないといけない真っ赤なお酒で、
霊鬼がみずからを傷つけて出した血で出来ているんだトカ。
唐のころ、
ある酒ずきな男が山で迷子になったとき、ポツンと酒屋の旗がみえたので、
さっそく入って酒を注文すると、出て来たのは真っ赤なお酒。
気持ちが悪いのでためらっていましたが
口に入れてみるとこれがすこぶる美味なお酒。
「こいつは意外だ。うまいうまい。ステキステキ」
と、ごくごくのみほして、男はおかわりを求めましたが、
「はい」と受け答えつつも、店の者は涙をこぼしつつ、
自分が霊鬼でこれは自分を傷つけてしぼり出した血酒である事と、
とても痛いがこれを売り切らねば報いから脱けられぬ事を告げたので、
さすがに男は恐ろしくなり、店を飛び出して帰り、以後は酒をやめたんだトカ。
鐘のつづいたあとですので、「だいはんじゃ」さんです。

鐘、といえば、お芝居まにあにとっては、すぐ「道成寺」が出て来るものですが
「道成寺」といえば、ムスメがヘビに大変身。――と、いうことで
大陸の本をぱらぱらとめくって、こういったものを引っ張り出して来た次第。
漢字でかくと「大斑蛇」で、どことなく日本の音読みが「だいはんにゃ」な感じですが
おすがたは、イラストをごらんになってのとおり、へびさん。
むかし、李勢(りせい)の寵愛を受けていたうつくしい側女が
その姿を変じてなってしまったという大きなへびで、
李勢は家臣に命じてこれを庭に放させましたが、
何回も何回も李勢の寝台の下にニョロニョロ現われつづけたので、
李勢もおそろしくなってしまい、ついにこれを打ち殺させたんだソウナ。
『独異志』には、「なんで変化しちゃったのか」のあたりが
特に書いてないので(「一旦化為大斑蛇」でおしまい)
あんまりくわしい事情がわかんないのですが
「清姫」とかみたいなものの進化前な感じのおはなしです。
ぶんぶんぶん、ハシカなる。「ちはち」さんです。

備中の国の飯名山にひそんでいたという邪悪な蜂の大群。
むかし、この山のまわりの村々に麻疹(はしか)が大流行したとき、
たまたまこの地をおとずれた旅の行者が
「これは山にいる蜂たちの魔力のせいである」
として(なかなか他には類を見ない感じの理由ですが)
二十一日におよぶ断食の行をした結果、
この蜂たちがすべて地に落ちて死んでいたので
村人がこれを集めてボーーーッと焼き払ったところ、
村々に巻き起こっていた麻疹の流行も収束に向かったんだトカ。
この行者どんの法力によって蜂が大量に落ちて死んでいた坂道には、
その後「千蜂坂」という地名がつきましたとやら。
絵草紙&錦絵研究人
まんが描き
こっとんきゃんでい 主宰
山田の歴史を語る会 同人
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