▼秋のすねこすり愛護運動週間=つづき

足利幕府御憑総（おたのもそう）奉行支配下にあるすねこすり愛護職二名の者は、
交通安全運動週間にあわせて作られたすねこすり愛護運動週間のポスターを貼りに
高札場（こうさつば）へ行ったところ野生のすねこすりに囲まれウハウハキュロキュロ。

しかし、しがなき宮仕え、すねこすりに関する悪事を未然に防ぐため
幹線道路へ新たに設置された関所をみまわっておいで！――というお奉行からの指令を受け
道すがら買ったオハギ（見切り品）を押し込みながら目的地へと向うのでした。


【登場人物】


　膝薬師（ひざやくし）
　――御憑総奉行配下。膝の人面瘡のおばけ。

　臀之筋（でんのすじ）
　――御憑総奉行配下。でん部の筋肉のおばけ。

　
２名はすねこすり愛護職として、すねこすりの愛護、育成に関する業務ならびに
ひそかに世に暗躍しているという食用すねこすり密輸の徒を取締る役目を任じられている。



「……うぅ、ゴホッ、ガハッ、……グヘッ。


「だから、走る前にきなこのオハギはやめておけと言ったノダ。


「だって他には、こしあんしかなかったんだから、しょうがないだろう！
　つぶあんが好きなの！　つぶあんがよかったの！！　ゴホッ。


「おぉ、やっと関所についたぞ。


「ゴホゴホッ。――あぁ、ここだ、ここ。


「ここの門前にもポスターを貼っておくノダな。





「ここなら行き来する妖怪も多いし、目にとまりやすいなぁ。


「おいッ、膝薬師（ひざやくし）！　あっちを見ろ！


「え？！　あ、あれかッ？　


「違うっ！ あの宮尾すすむっポイ枝ぶりの松ではないノダ！


「えっ？ あっ！！ あっちか！ むむっ、明らかに法定速度以上で駈ける怪しき飛脚！


「ピピーーーーーっ！！ こらっ！　待つノダ待つノダ！！　止まりおろう！！




「わーーーーっ、ななななななななにするのーーーっ！！


「お定め以上の速度で道を行くとは、いそがしといえどもいかぬノダ、


「まして、ここは関所だ、徐行して、通行切手をシカと見せよ。


「わーーーーっ、わたしはあやしいものではないのーーーっ！！


「いきなり不信な妖怪にありがちな言動すぎるノダ。


「ややっ、この通行切手、更新期限が過ぎておるではないか！


「ますます怪しき、いそがし飛脚。


「ひぃぃ、つい、いいいいいいいい忙しくって！
でも、この荷物には何も怪しきものは入ってございませんっ！！


「では、あらためさせてもらうぞ！　それなる荷物をよこせ！


（はさみ箱に耳（どこ？）を当てて） 「ん……、怪しき音などは無いな。


「はらはらはらはらはらはらはらはらはらはら


「どれ、では中を改め……

ああああああっ！！！！


「どうしたっ！！！？


「こんなにミッシリとつぶあんが！！
さてはキサマが遅かったから店に在庫がなかったのかっ！！


「まぎらわしく叫ぶでないっ！！！
もうよいっ、とっととパン屋さんへ届けるため、通るが良いっ！！　　　　　


２名の活動は今週中、まだ何回か――つづく