鐘のつづいたあとですので、「だいはんじゃ」さんです。

鐘、といえば、お芝居まにあにとっては、すぐ「道成寺」が出て来るものですが
「道成寺」といえば、ムスメがヘビに大変身。――と、いうことで
大陸の本をぱらぱらとめくって、こういったものを引っ張り出して来た次第。
漢字でかくと「大斑蛇」で、どことなく日本の音読みが「だいはんにゃ」な感じですが
おすがたは、イラストをごらんになってのとおり、へびさん。
むかし、李勢(りせい)の寵愛を受けていたうつくしい側女が
その姿を変じてなってしまったという大きなへびで、
李勢は家臣に命じてこれを庭に放させましたが、
何回も何回も李勢の寝台の下にニョロニョロ現われつづけたので、
李勢もおそろしくなってしまい、ついにこれを打ち殺させたんだソウナ。
『独異志』には、「なんで変化しちゃったのか」のあたりが
特に書いてないので(「一旦化為大斑蛇」でおしまい)
あんまりくわしい事情がわかんないのですが
「清姫」とかみたいなものの進化前な感じのおはなしです。
ぶんぶんぶん、ハシカなる。「ちはち」さんです。

備中の国の飯名山にひそんでいたという邪悪な蜂の大群。
むかし、この山のまわりの村々に麻疹(はしか)が大流行したとき、
たまたまこの地をおとずれた旅の行者が
「これは山にいる蜂たちの魔力のせいである」
として(なかなか他には類を見ない感じの理由ですが)
二十一日におよぶ断食の行をした結果、
この蜂たちがすべて地に落ちて死んでいたので
村人がこれを集めてボーーーッと焼き払ったところ、
村々に巻き起こっていた麻疹の流行も収束に向かったんだトカ。
この行者どんの法力によって蜂が大量に落ちて死んでいた坂道には、
その後「千蜂坂」という地名がつきましたとやら。
つよいもうこん。「びちょうもうしゅつ」さんです。

漢字でシッカリかくと「鼻長毛出」。よんで字のまんまなものですが
いちおー、ふしぎな奇疾のおひとつ。
豬血(ぶたのち)や羊血(ひつじのち)を大量に摂取すぎると
そのひとに起こると言われていたもので、
2尺くらいの長さに鼻毛がニョキニョキ生えて来てしまうと言います。
生えてくる毛はナワみたいな感じになっていて、
ひっこ抜こうととしても痛すぎて全く抜けないソウナ。
(切ることは出来るんだろうけど、すぐまた生えてきちゃう)
『本草綱目』をみてみると
硇砂(どうしゃ)という石と、生乳香(せいにゅうこう)を粉末にして
ごはんに混ぜてまるめてつくった丸薬を、毎日眠る前に10粒服用すると
治る、って書いてあります。ふむふむ。
なんでおなかを壊したの。「えんしょうぐん」さんです。

山の中に住んでいる大きな猿の親分。
『西遊記』の孫尊者みたく、たくさんの山のお猿たちをしたがえています。
むかし商州のある医者が突然
見知らぬひとの一団に連れ去られたかと思うと、
そこは山の石室のような場所。
そこに臥せっていたのがこのお猿で、
まわりにいる婦人たちが「将軍はお腹を痛めて困っております」と頼んで来たので、
医者が薬を処方してあげたところ、痛みは平癒したらしく、
お猿たちからあつく礼をされ、お礼の品をもらって帰ったんだソウナ。
しかし、実はこのお礼の品、猿たちが近郷の家から盗んだものだったので、
医者はいらぬ疑いを受けましたが、これは、品物をもとの家に返す事で解決。
すると後日、「猿将軍」たちが医者の家をおとずれ、
改めて、支障のないお礼の品をたくさんくれたので
この医者は、なかなかな富豪になったんだソウナ。
お礼にもらったおみやげが実は近所の家から失くなってた品物だった、という展開あたりまで、
日本に伝わっている狐や狸などのもとへ往診にいった医者の話と大体同じかたちのものです。
実際は何をしてたのかよく知らない。「なかむらしんえもんのじょう」さんです。

豊後の国の守江浦に出たという武士のぼうれい。
中村新右衛門尉というこの人物は
関ヶ原のいくさに負けて軍船で逃げてきた西軍方の武士のひとりで、
黒田勘解由のひきいる番船にさまたげられた時に
この地で大沈没をしてしまい、海のもくずになってしまったおかた。
船上に乗ってるひとにたびたび取り憑いたりしていましたが、
(このときにどんなことをしてたのかは特に書いてないから不明)
寛永のころ、ある娘に取り憑いた時
泣きながら「わがために法事をいとなみてたべ」と願い込んでおり、
ひとびとが新右衛門の法要をしてあげたら、悪さはしなくなったそうな。
キラキラフイッシュ!! 「こうろうぎょ」さんです。

南の地の湖などに棲んでるというふしぎな魚で、
漢字の表示は「黄蝋魚」
これを一回まるごと焼いてから干しておくと、
暗い中でろうそくみたいな明るい光を発すると言われています。
ある旅の人が旅先で便所に入ったところ
真っ暗い中にボワーーーッチラチラチラと明るくひかってるものを見つけたので
「これは何かこわいもんが便所に住んでる!!」
と思って、灯りを採って来て便所をくまなく探ってみる事に。
しかし、特に邪悪そうなものは存在してないので
「なんだ、気のせいか」
と安心したのですが、また便所に来ると
ボワーーーッチラチラチラとナゾのひかり。
わけがわからなくて怖いので、ついに宿の者に訊いてみたところ
「どれ……、あれあれ、おまえさま、黄蝋魚が落ちちょるがよ、アッハッハ」
便所に黄蝋魚の頭が落ちてたんだトサ。
地名が長い。「むすこやのはまのひとつめこぞう」さんです。

豊後の国は海部郡の米水津(よのうづ)にある
息子屋の浜という浜辺に出たという目の玉がひとつだけしかないおばけ。
この浜辺はいろんな貝が棲息してる事で漁師たちに知られてたそうで、
ある日、ここに貝を採りに来た親子が「わぁ、いっぱい採れる採れる」と
船にいっぱい貝をひきあげて篭の中にドッサリ入れておいたところ、
ハッと気づくと篭が空っぽ。
こういうことが数回つづいたので、父親があやしんでいると
灯りの影に一ッ目小僧の姿がチラっ。
「これはまずい!」と子供をひっぱって船に戻り、
浜からものすごい速さで逃げ出したところ
「しまった、せっかく子供が食えると思ったのに」と
一ッ目小僧のぼやきが聴こえたんだそうな。
そんなこんなで、ここのおばけが人間を食べるという事が知れて以後、
ここに漁師たちは近づかなくなったんだトカ。
お話の形としては、四国や九州あたりに多く伝わってるもので
「だきのばけもの」とかとおんなじ感じのもの。
絵草紙&錦絵研究人
まんが描き
こっとんきゃんでい 主宰
山田の歴史を語る会 同人
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