▼本日の妖怪（1936）じゅばんのゆうれい

「和漢百魅缶」西暦だったらばー２．２６事件のあったころ、
通算１９３６体目のおばけさんは、肌着だわさ、「じゅばんのゆうれい」さんです。

お着物を着るときの肌着を、じゅばん、と称するわけですが、
こちらはそれが化けて出た、といったシロモノ。
――と、いうよりも、実際は、ことばの表現の上だけなので
化けたらこんなのだろう、というシロモノ。（笑）
 


むかしむかしは、「じゅばん」というと長い「ながじゅばん」じゃなくて、
腰たけあたりまでの「半じゅばん」が定番でしたので、

「ゆうれいは、腰から下がないじゃんサ」ということから、
衣服の化けたものは、襦袢の幽霊、となっちゃいました次第。

▼本日の妖怪（1935）じゃばらおんな

「和漢百魅缶」西暦に換算するとナイロンが発明された年、通算１９３５体目のおばけさんは、
びよんとのびるか、蛇行をするか。「じゃばらおんな」さんです。

いまのところはっきりした作者の知れていない
『百鬼夜講化物語』（ひゃっきやこうばけものがたり）に描かれてる
おばけのひとつで、顔が三ッ目でお腹がヒダヒダなあたりが特徴。

 

本の文章には、「縫箔屋」や「紋」がどうしたとか書いてありますが、
単に、蛇腹（じゃばら）から連想された戯文で、
（蛇腹糸という糸が、着物に家紋を縫うときに使われてるノデ）
どの程度まで、デザインのベースになっているのかは不詳です。

はっきりしてるのは、蛇腹がついてる女のおばけ、といったダケ。
蛇骨婆（じゃこつばばあ）の親戚かどうかはもっと不明。（笑）

▼本日の妖怪（1934）ハタパギ

「和漢百魅缶」西暦でいうとハチ公の銅像が渋谷の駅前に建てられた年、
通算１９３４体目のおばけさんは、渋谷から遠く離れて与論島の「ハタパギ」さんです。

「キジムナー」さんや「ケンムン」さんといった、日本の南西の島々につたわる
森や水辺にでるおばけの仲間で、ケンムンの別名のひとつとしてもとらえられています。

森のなかなどで、「ハタパギ」さんのことを呼び捨てにしたりすると
怒って、そのひとを道に迷わせたりもしたとか。
 


キジムナー、ケンムンなどが火の玉に関連しているはなしが多いのと同様、
こちらさんも火の玉に関するむかしばなしが残っていて、
海の上などに火の玉をいくつかチラチラさせたりしましたとか。

▼本日の妖怪（1933）はらのおに

「和漢百魅缶」西暦でいえばヒットラーが政権をとった年、通算１９３３体目のおかたは、
胃の活動はこのおにたちのハタラキ。「はらのおに」さんです。

先日のアップが「ハナ」でしたが、本日はそれをうけて「ハラ」
――といったわけではありませんけど、

こちらの赤鬼＆青鬼さんは、お腹の中にすんでいて、

ひとがごはんどきに摂取した食べ物がくちから入ってくると、
それをウスとキネでこまかくつきくだいて食べる。というのが活動の全般。
 


むかしむかし、子供に「ごはんを食べたらそのあと体の中でどうなってるの？」
などといった質問をして来たのに対して、
保護者がかるく答えるときに使っていたもののひとつがコレなんだソウナ。

一年中、年末のおもちつきみたいなことしてるのだネエ。

▼本日の妖怪（1932）おうのはな

「和漢百魅缶」西暦でいうなればパンティー普及の火蓋になったと俗にいう火事のあった年、
通算１９３２体目のお方は、おさきぶれーおさきぶれー。「おうのはな」さんです。

ひょーせんの描いてる「あかはな」というオリジナルキャラの
実の父（笑）であるデザイン母体となったお方で、
お祭の行列などのトップを歩いていく、
猿田彦（さるたひこ）なお面をつけた役割の方の呼び名のひとつが
こちらの「王の鼻」――でございまする。
 


むかしの悪口ことばのひとつに「王の鼻」とか「王鼻」とかいうものがあるんですが、
それはコチラのお面相が根本となっておりますとやら。

▼本日の妖怪（1931）さんそくべつ

「和漢百魅缶」西暦だと満州事変がボンボカボンなころ、通算１９３１体目のおかたは
たべるな、キケン！！　「さんそくべつ」さんです。

大陸につたわる三本足なすっぽんで、
むかし、これを手に入れた奥さんが旦那さんにこれを料理して
食べさせてあげたところ、いつのまにか旦那さまの姿が消失。

あとには水たまりがあったダケ。

急にこの世からいなくなってしまったので、
奥さんは旦那さんを殺したものだ、という嫌疑がかかって逮捕起訴。
お調べが進んでゆき、奥さんが「三本足のすっぽんを……」と何度もいうので
例のものを牢獄の死罪人に食べさせてみたところ、
いつのまにやら罪人の姿が消失して水たまりダケになってしまったので、
配偶者殺人罪はのがれましたとかなんとかいう、

なんともふしぎのむかしばなし。



デヂタルな水面をちょっぴっと頑張って塗ったでスよ。

▼本日の妖怪（1930）こくいにおう

「和漢百魅缶」西暦で申せば冥王星が観測された、通算１９３０体目のおかたは、
わるいニオウサマ。「こくいにおう」さんです。

鴻巣の勝願寺の仁王像で、
むかし、夜になると動き出してひとに襲い掛かるとか、
子供をとって食べちゃう、とかいう噂がたったために
和尚さんが像の首を切り落として、別のものにつけかえたところ、
噂がやんでひと安心でした、という昔話でござる。
 


実際のところ、ホントに仁王様が悪事をしていたかどうかは不明。

▼本日の妖怪（1929）しり

「和漢百魅缶」西暦で言えば鳥海尽三センセイの生まれ年、通算１９２９体目は
セップクしないと開封できない。「しり」さんです。

大陸のむかしばなしなどに時おり出てくるもので、
水の神様などが物などをひとに届けるおりにつかう、おつかわしめ。

目的の相手が乗ってる船の上や、歩いてる道の上に、
大きな鯉がピョーーンとはねとんで来て、
そのお腹をひらいてみるとあらふしぎ、何か入ってるよ、といったシロモノ。

――開封法に、やや難ありですが、
魚のお腹にレターが入ってたためしもある大陸のことですから、
そこらへんは大目にみてあげてつかぁさいナ。
 


季節ガラ、つい、緑と赤のコントラストを混入。

▼本日の妖怪（1928）ずいこうじゅ

「和漢百魅缶」西暦で言えばキリンレモンの誕生年、通算１９２８体目のおかたは、
絵の中の、へびさんじゃないほう、「ずいこうじゅ」さんです。

むかしむかし、隋侯というおとのさまが歩いておりますと
道に、体がぶっちょんぎれて息もたえだえになっている蛇が！
まだ息のあるのを隋侯は見るや、これを助けんとおぼしめし、

「これ三太夫、薬をもって手当てせよ」（――大陸だから三太夫とは言わぬでしょうがネ）
と、命じさせ、てあつくこれに応急処置をほどこさせ、野に返してやりました。

すると、ふしぎやそののちに、へびがひとつの光る宝玉を持って
隋侯へお礼をしたという、『捜神記』などにある、ヘビの恩返しの一奇談なり。
 


ケガしたヘビ、という点で、『蒙求』とかだったら、
日本の「手負蛇」（ておいへび）と一対になりそうなお話ですが、

この、「隋侯珠」、むかしばなしの世界では、
そののちにまで名の響く、著名の宝玉のひとつであります。

▼本日の妖怪（1927）いとくり

「和漢百魅缶」西暦で申すと昭和の大恐慌のころ、通算１９２７体目のおばけさんは、
糸をゴーゴーさせる音。「いとくり」さんです。

木の穴の中から、糸をくる音がしたなぁ、なんだろなぁ、
……ま、いいか。と思って歩いていると、
１００メーターすぎても、２００メーターすぎても、１キロ２キロ歩いていっても
ずーっと、その音が同じ音量程度できこえてくるヨ、びっくりダね！
と、いった音のおばけさん。
 


いたちの化け種目のひとつ、とも言われておりまして、
これがつたわる甲斐の国には、ほかにも「あずきあらい」のような音を
いたちがやる、と言われていて、なかなか、いたちもミュージシャン。

▼本日の妖怪（1926）えいちゅうじゅう

「和漢百魅缶」西暦で申せば年末だけ昭和元年、通算１９２６体目のおばけさんは、
「えいちゅうじゅう」さんです。

「嬰中柔」という字をあててますが、これは仮の借り字で、
本当は「嬰」は「やまいだれ」がついて癭、「柔」は「けものへん」がついて猱、
と、なるのが本字でございます。ああ、漢字コードのややこしさささ。
 


首に出来たこぶの中に数年間も隠れ潜んでたということで、
渓斎英泉シショーが使ったりしてた技法、ふしぎの天眼鏡をつかって
中味スケスケ映像という態にて描き上げてござる。

▼本日の妖怪（1925）ふのぬい

「和漢百魅缶」西暦で申せばJOAKの開局年、通算１９２５体目のおばけさんは、
オリジナルさんの中からポワンと、「ふのぬい」さんです。

ふわふわした布を光らせて、かげろうのようなものを出す、という
設定のおばけさんでございます。キラキラキラキラ。
新体操みたいにふわふわ。

 

『餓鬼草子』に出て来る、大きなおふんどしの餓鬼が
デザインの源流になってることは、ここだけのハナシ。ぶわっ。