冷たい貨幣。「このこにこまる」さんです。

信濃の国の水内郡などにつたわるもの。
夜な夜な暗いなかで 「ぶんぶん茶釜に毛がはえて、
ふたを取ればふぁーんという、このこに困る、このこに困る」
と声をあげてひとひどを怖がらせてました。
ある胆のすわったひとがこれを退治してやろうと、
声にむかって「困るなら、おれに寄こせ」と呶鳴ったところ、
何か冷た~いものを
「はいー」
と渡されたので、家に戻って何なのか灯りでよく見てみると
たくさんのお金の入った瓶だったといいます。
むかし埋められて
そのまま放置されつづけてた
おかねの化けたものだったというもので、
「かねのばけもの」(釛の化物)のひとつ。
おおかみおくさま。「たねのとうすけのかかあ」さんです。

因幡の国智頭郡につたわるもので、
食べてた肉の骨をのどにつまらせて困ってたところを、
種というところに住んでた藤助という男に助けられたおおかみ。
女の姿に化けて藤助のもとにやって来て、女房になって暮らしてました。
旅の人間を追いつめた狼たちが
「たねのとうすけのかかあ、手を貸してくれ」
と呼びに来たために、やがて正体がおおかみであることが知れて、
家から出て行ってしまいます。
しかし藤助の家の田んぼに、
穂は実らないけど臼の中でたたくと
普通の4倍くらい米が穫れるふしぎな稲を植えていってくれて、
その後の暮らしを助けてくれたといいます。
狼や狐が恩返しにふしぎな稲を田植えしてくれる話と、
狼の一団のかしらの狼が人間に化けていた話とが
あわさってるような構成になってるのが特徴です。
じゃじゃーん、鉄砲で撃たないで下さい。「ななまがりざかのおに」さんです。

磐城の国の白河郡の小田川村に出たというもの。
(小目川と書かれてるのは誤記魯魚だソウナ)
むかし、村の近くのななまがりと呼ばれる坂道に
「鬼が出る」と大騒ぎ。
あるひとは「あれは鬼なんかじゃない」
あるひとは「あれは鬼ではなくてわしの徳が高いからあらわれた瑞獣だ」など言うなど
いろいろと取り沙汰されたり怖がられたりしたそうですが、
猟師が鉄砲でズドンと撃ってそのかたちをじっくり確かめたところ、
一頭のくらしこ(かもしか)だったソウナ。
山仕事のおじさんの前でニヤニヤ笑ってたりする。「かしらんぼ」さんです。

紀伊の国の牟婁郡川添村などにつたわる
山や川に住んでいるおばけで、
ひとの目をくらましたり、
小さくて可愛い女の子に化けてひとにいたずらをして来たりします。
たとえば、真砂光男さんが採集(「熊野採訪録」)してるはなしでは
山で仕事をしてて、お弁当をたべてたら
その前に5、6歳くらいのかわいい女の子が歩いてきて笑ってた。
「丸太おとすからここはあぶないよ」
と言っても、ずっと笑ってるので「これはかしらんぼだ!怖い!」と
思って逃げ帰ったりしたそうです。
子供のすがたに化けてない、
ほんとうの姿を見たことのあるひとはいないそうですが、
長い一本足の姿がほんとうの姿だ、
などとも言われてたそうです。
ちゃぷん。「てんぐのひょうたん」です。

「てんぐ」(天狗)たちの飲んでる
おいしい、ふしぎなお酒がはいってる容器。
ときどき、置き忘れたまま放置されてるときがあったりして、
人間がひろったりするはなしがあります。
タトエバ、『土佐奇談実話集』(1957)にのってるはなしですと
安政のころ、土佐の国の新改村で手習いなどの師匠をしてた
維盛という名前のさむらいが、天狗たちが木の上で祝言をあげていたのを
たまたま目撃、
朝になって天狗たちが帰るまで眺めてたところ、その場に
この「ひょうたん」がひとつ、置き忘れてあったので
持って帰って弟子たちと飲んでみたところ、
ふつうの酒とはくらべものにならない、
とんでもなく美味しいお酒だったトサ。
あけまして三が日もうちすぎまして
「和漢百魅缶」も、例年どおり本日より操業開始でございます。
ということで、いつものためしの連続アップ興行。
それではご覧くださいませ。
■まつたけししょう(松茸師匠)
■ いもほりぼう(芋堀坊)
文渓堂『怪談豆人形』に登場してる大きな寸法の妖怪
(ほかの妖怪たちが小人島から来てる妖怪だから)3体のうちの2体。
「松茸師匠」というのは名前がないので勝手につけちゃった "呼び名" ですが
(――命名主は、妖怪のみいらとかをつくってる式水さん)
「芋堀坊」のほうは、もともとの本文にあるもの。
■ みくにのきつね(三国の狐)
「王子の狐」のように、きつねにだまされたふりをして逆にだまし
さんざんっぱにら飲み食いしたお勘定を任せていっちゃう、
というはなしに出てくるすこしお気の毒なきつねさん。
『北国巡杖記』では逃げるときの文に「九尾」とか出て来ますが
こいつは文飾上の表現のようで、しっぽがその数というわけではない感じ。
■ ぎいぎい
おそれられていたものの正体は……な、はなし。
■ なわいけのぬし(縄池主)
お膳を貸し出してくれるシリーズですが、
破損時のおしおきが結構てきびしい主さまです。
■ なりふろがま(鳴風呂釜)
大陸では釜いがいにも鍋も甑(こしき)も鳴ったりしますが
吾が国でも、風呂釜が鳴る、というものがありました。
去年から蒐集強化命令が出てる佐賀県もの。
■ おんじ
志摩につたわるだいだらぼっち。
■ とくいのあげたか(得意之揚鷹)
服部撫松の漢文「怪化奇談伯労化鷲」 に出てくるもの。
明治の戯文に出てくる、「開化鳥」ななかまたちのひとつです。
――とりあえず、操業はじめは異常なく
トンテンカラリンこれだけアップ。
本年もまたどしどしとアップして参りまするので
いずれもさまにおかれましては、いつものごとく
また製造ごとに御笑覧のほど、よろしくお願い申し上げたてまつりまする。
とざい、トーーーーーーざーーーーーーーーーーーーい。
絵草紙&錦絵研究人
まんが描き
こっとんきゃんでい 主宰
山田の歴史を語る会 同人
新・妖怪党 党しゅ
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