手足かくかく。「かにのよめさ」さんです。

越中の国の富山などに伝わるおばけで、
年を経た蟹が人間の姿に化けたもの。
「ごはんを食べないでよく働いて、うんこをたくさん出すお嫁がほしい」
という願望の男のもとに嫁にきて、そのとおりのお嫁におさまっていましたが
(「うんこをたくさん」というのは畑の肥料にするため)
ある日、夜中に起きて行く嫁をみつけた家族があとをついていくと
家の裏で、大きな業務用(野良仕事とかの)の釜でごはんを山のように炊いて
頭の上のくちから、こっそり大量のおむすびを食べてる姿が目撃されてしまいます。
このはなしは、ごはんを食べない女房の話のひとつで、
似たものに「くもにょうぼう」とかもいます。
富山にのこってるお話ですと、おむすびを食べていた所を見つかったあと、
そのまま家から追い出されてしまっておはなしはおわりになっていて、
男をさらったり、しょうぶの原に隠れたりなどの話がなかったりもします。
夏になったらきをつけよう。「うすひきばあさま」です。

讃岐の国の菅沢につたわるおばけで、
夏の土用のころに水辺に近づいたり泳いで遊んだりすると、
これが出て来てひっさらっていってしまうと言われています。
むかし、石臼をひきずりながら池に没したばあさまが、これになった
などの言い伝えが武田明などによって採取報告されてますが
なんで臼もってるのかはヨクワカンナイ感じです。
名前としても、かなりお近いかんじのする
佐渡の「うすおいばばあ」との関係は未詳ですが、
水辺に出て子供を取る(水あそびに対するいましめの意味としての妖怪ということ)
という点でみると、どちらかといえば、総州の「てながばばあ」とかに近いみたいです。
カルシウムたっぷり。「だいなるひとのかばね」さんです。

天文のころ(1532-55)に日向国でおおひでりがあったとき、
南浦の海の干あがったところから出て来たという巨大な棺を
ゴゴゴゴ、パカッ、とあけてみたら、その中に入ってたという大きながいこつ。
なにものなのかは知れていません。
似たものに「おおきなゆびぼね」がありますが、
あちらはホネそのままの未包装で、少々ありようは違うようです。
(あっちは、フツーに、海の哺乳類のホネかも知れません)
スイッスイッ。「かべのうえのぬけくび」さんです。

出雲の国の松江あたりに出たという「ぬけくび」で、
お寺の塀壁の上からにこにこと笑いながら顔をみせてひとをびっくりさせたと言います。
ある腕っぷし自慢の武士がこれを刀で斬ったところ、
なんだかひどくクサいものになったといいます。
(ベチョベチョしてたかは不明)
斬ったところ、なんだか臭いものになった、
というのは印旛沼の「かわぼたる」などに少し近いものがあるのかも知れません。
火の玉と、ひとの首がふわふわ飛び出すおはなしは、
おんなじ展開(眠ってるあいだに、飛んでたら誰かに追われた)のものもありますしね。
もっとしらべるよろし。
バリヨン・イタズラスルデスにつづいて
バリヨン・カネニナルデスのなかのひとつ、「ばろん」さんです。

越後の国の蒲原郡に伝わるおばけで、
ひとに向って「ばろん!」と声をかけてくるもの。
むかしむかし、いろんなものに憶病な男がいて、
夜は怖くってお便所にもひとりで行けない。
これを「困ったもんだ」と思っていたおかみさんが、
夜、大きなへちまをぶら下げげておいて夫をおどろかせ、
「ハハハ、おばけだとかそんなものはみんな、この、へちまみたいなものさ」
――と、言い放ったのが、ことのおこり。
その後、「みんなへちまなんだ!」と怖いもの知らずになったこの男(単純な神経)
当時むらの間で「こわいものじゃ」と話題になっていたこの妖怪を
勇気をふるって背負って帰って来たら、ひとかたまりの黄金になっていましたとか。
「ばろん」は「おぶえ」という意味のことばで
「おばりよん」や「おぼさりたい」、「ぶっつありてい」など同様の妖怪と、同じものです。
別の「怖がらずに対処したらいいものをくれる妖怪」のはなしによくある導入で、
ほかには、道にねそべってる巨大な牛のおばけとかに使われています。
バリヨン・トリコロスノデス。「おぶめづか」さんです。

三河の国の宝飯郡、牛久保にあった塚に出たというおばけで、
きれいな女のひとの姿で現われて「おってくれ、おってくれ」と
おんぶをしてくれるように呼びかけて来たと言います。
これをおぶってしまうと殺されてしまう、と言われていました。
名前の感じと、女のひとの姿という点では「うぶめ」の仲間
かなぁ、と思われますが、話としては昨日の「おけしぼうず」と一緒で
背負うと悪さをする妖怪たちの仲間にあたっているようです。
おぶめ塚は、この妖怪が出てくるので
しばらくのあいだは人がとおりかからない場所になってたのですが
早川孝太郎が柳田國男に送ってる報告書によると、
これに遭遇した武士が、この妖怪をおぶったとき
持っていた刀の飾りについていたニワトリの彫刻が
コケーーーーーッと鳴いて警告をして武士をたすけたこともあって退治され、
それ以後は、出没しなくなったんだトサ。
ニワトリさまさま。
いたずらばりよん系。「おけしぼうず」さんです。

阿波の国の東祖谷山の山の中に出たという
3才くらいの小さい女の子のような姿をしてるというおばけ。
「おうてくれ、おうてくれ」と騒ぎながら山を行く人の前に現われたと言います。
(このあたりが、「ばりよん系」な感じですが……)
これを背負ってしまうと脇や首のあたりをくすぐられて
背負った人は死んでしまう、と言われていて、
(……このあたりは、ひとにおぶさったり肩車したりしていたずらするものに近いです)
「重いから」とか「しょい縄の長さが足りないから」などと言って
これをスッパリ断るんだソウナ。
おなじ阿波の国に伝わる「けしぼうず」とは
ほぼ同じような妖怪だと思われます。
中身はゼロ。「まくらのしたのたまてばこ」さんです。

甲斐の国などにつたわるもので、
悪い夢を見て起きたときには櫛の歯を折って外に捨てて、
誰にもきこえないように「枕の下の玉手箱、ひらいてみたらなにごとも無し」
と唱えるといい、というおまじないに出て来るもの。
悪い夢を打ち消すおまじないには、
ほかに「ねなしかづら」などもありますが、
なかなか珍奇なものがポロポロ点在してるのですね。
10いく日もつづけてきました強化イベント、画+名の絵巻物をおえまして
ちょっと昔話の畑からチョイチョイな、と拾い上げまして「しょけら」さんです。

こちらさんは実際、庚申の日に関する話に出て来る「しょうけら」で、
(しょきら、とか、せいきら、とか言われて、出て来ることは出て来る)
庚申のかみさまに仕えているらしいおかた。
3尺くらいの背丈のふしぎなひとで、なんと、お料理が得意スキルです。
羽前に伝わっている話では、
庚申講をしていたらそこへ旅の六部が「泊めてくだされ」と訪ねてきたので、
みんなで親切にしてやったところ、この六部が
「お礼にわたしの家に来てくだされ、ご馳走をします」と家に招きましたんだソウナ。
そこではさっそくお酒がふるまわれましたが、
ひとりお酒のいけない男が、ちょっと興なげに、ソッと隙間から台所をのぞいてみたところ、
この「しょけら」が直垂(ひたたれ)すがたで大きなまな板に向かい、
ご馳走のお料理をつくってたので 「うーっわーっ」 と、ビックリぎょうてん。
こいつは何かおそろしい家なんじゃないかと思い、
「しょんべんにいきます」と言ってトコトコ自分の家に帰ってしまいました。
そんな様子を知らないほかの面々は、
そのあと六部が出してくれたご馳走をモリモリパクパク「うめぇなぁ、うめぇ」と食べて帰ったのですが、
しょけらの作ったご馳走を食べたこの人々は、その後とても長生きをしたトサ。
庚申を信心していた人々が庚申の神の化身に招待されて、
寿命の延びる食べ物で饗応される、という型の話の一ッに出て来るものです。
むかしのキッチリしたお料理の式みたいに
直垂すがたでお料理をつくってたってあたりが、なんか面白い点。
おおきなふくろに邪鬼いっぱい。「やくしん」さんです。

ましょう、もくじい、いちねん、ゆきぼうず、うみほうし、
おうま、うぬめ、ぬらりぐり、はぢかき、かもせひ、
まじめ、てつしゃ、……と、今月はながながと強化週間して参りました
画+名な絵巻物の中からなシリーズも、ついに本日でひとだんらくです。
きょうのアップは、「やく神」さんという名前がつけらて
絵巻物などに描かれている、おおきなふくろを持ってる大きな魔物です。
土佐家の『百鬼夜行絵巻』に描かれている
唐櫃を破って開けている妖怪にかたちは似ていますが
なんで、その唐櫃が大黒さまみたいなふくろにデザイン変貌したのかは
あんまりよくわかりません。
(唐櫃も、ふくろも、中にまたこまごま妖怪(邪鬼?)が入ってる点はおんなじ)
「やく」というのは「疫」あるいは「厄」だと思われます。
「王摩」とかにもあるみたいに、なんとなくスケールの大きめな
漠然とした名前ってのも、絵巻物には割とあるのですな。うん。
(ほかにも、悪魔とか摩王とかいるし)
絵草紙&錦絵研究人
まんが描き
こっとんきゃんでい 主宰
山田の歴史を語る会 同人
新・妖怪党 党しゅ
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2008 新・妖怪党
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