みずを得る。「ごろべえのどんぶり」さんです。

越前の国の上河瑞村につたわるもので、
むかし五郎兵衛さんの家に家宝としてつたわってた汚くて古いどんぶりばち。
先祖代々天井に秘め置いていたそうですが、
五郎兵衛さんの家の経済がどうにもいかなくなってしまいうるものも無くなり、
ついにこれを売ることに。
これをなかなか趣きのある古色のどんぶりばちだ、
と源右衛門というひとが買ってくれたのですが、
家に帰って「どのくらいものが入るかな」と水を試しにそそいでみたところ、
中に描いてある鯉(こい)の絵が動き出して跳ね上がったんだトカ。
「これはすごい宝だ、五郎兵衛はこれを知らなかったろう」
と、源右衛門が五郎兵衛の家にこれを返しますが、
これを聴いた五郎兵衛が自分の家で水をはってみても、
鯉はピクリとも動かず絵のまま。
「この丼があの家に行きたがってるのじゃろう」と、再び売り返したんだトサ。
このはなしを記した中村九堂の「丼の奇瑞」という記事(『南越民俗』5号)によると、
この丼鉢はこわれてしまったため昭和10年代の時点で、すでに現存してなかったことが知れます。
惜しい。
どこの権現様に行く? 「ごんげんさままいり」さんです。

越後の国の矢田の山あたりに出たというもの。
旅をしているすがたをした僧侶が歩いてるのと、
その後ろを何物だかよくわからない犬の子くらいの大きさの動物が
ころころ、2、3匹走ってついていったのと出遭った! というふしぎなもの。
コレは、もじ(むじな)の化けたものらしいトカ。
むかし、本成寺村の吉蔵という男の子が母親と山の畑に行ったとき
この僧侶が歩いてるのを見つけて、「ぼうさまどこ行く」とたずねたら
「権現様詣り」と言ったのですが、後ろについてるヘンな動物を目撃して
一気にビクビク。母親も怖くなって畑仕事をおっぽりだしてその日は帰っちゃった
とかいう話がREKIRO(外山暦郎)の『越後三条南郷談』に載ってます。
せんしゅうの「いとんぼう」にひきつづいての
画像妖怪のニューフェイスなかんじのひと、「しりめ」さんです。

あたまに眼の玉が生えていなくて、
からだのおしりのほうに眼の玉の生えているおばけ。
けものみたいな姿をしてますが、どんなものなのかはくわしくは不明。
ぬっぽり坊主にのちのちつけられた「しりめ」という呼び名とは
特に関係ありません。
まえ、新・妖怪党「not丑みつ四六時chu ポスター」 の中に
あえて「尻目」と「ぬっぽり坊主」を一緒にぶち込んだように、
蕪村の描いたアチラさんは、あくまでも「尻目」というのは20世紀に這入ってからの
呼び名でございますから、このあたり、ご混濁めされませぬよう。ご注意あれ。
絵巻物に描かれているものですが、同じ系統のものと考えられる絵巻物に、
似た姿かたちで、ちゃんと眼の玉が普通の位置に描かれている「むじな」という作例も見受けられて、
どういう存在なのかが少し疑問な妖怪です。
(ちょいとくわしくはコチラとかで)
イヨー、のみっぷりゴサカンゴサカン。「ますばみのろうじん」さんです。

越前の国につたわるもので、
ある酒屋さんにきたない老人がやって来て、枡酒をたのんだかと思ったら、
あっという間に一升枡いっぱいのお酒をほしてしまうので酒屋さんが驚嘆したというもの。
「枡食っぷりがすごいから酒はただでいいよ」
と言うと、老人はよろこんでもういっぱい。これもいっきにゴクー。
話をしているうちに「酒屋、お前の家では子の嫁をさがしとるだろう」と老人が言ってきたので
「えぇそうです」と答えたら「なら、礼として世話してやろう」といってどこかに帰っていってしまいます。
すると、間もないうちに店の奥でドサッという音がして、
すっぱだかの若い女がきょとんと座ってたそうで、話をきいてみると
「湯に入ってたら急にわきのしたがくすぐったくなって、気づいたらここにいた」
と女がしゃべったので、
あの老人は「てんぐ」だったんじゃなかろうか、とわかったんだソウナ。
ごはんの配給ーぅ。カチカチ。「いぶりやま」さんです。

越前の国、大野郡にある山で、
毎日、空からごはんが降ってきたというふしぎなお山。
むかし3人の比丘尼(びくに)が住んでいて、
このお山がくれるごはんを食べながら、生活して修行をしていました。
しかし、
あるときひとりの比丘尼が
「2人がいなくなれば毎日、山がくれるごはんの取り分が増えるわ」
とわるい考えを起こして、2人の比丘尼を谷に落として殺してしまいました。
そのとき以後、ごはんが降ってくることは無くなったんだソウナ。
比丘尼がほかの2人を突き落とした場所には「比丘尼落とし」、
ごはんが降るのが廃絶して飢え果てた比丘尼が下山して来たあたりには
「よろぼ」という地名がついたんだってさ。
絵草紙&錦絵研究人
まんが描き
こっとんきゃんでい 主宰
山田の歴史を語る会 同人
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