ボトルマニア。「あぶらつぼをひくあり」さんです。
熊野の山の中にいると俗に言われてた大きな蟻(あり)さんで、
油壷をごろごろ引っぱっていっちゃうほど大きいと言われていました。
ただし、こういうもんが居るノダ! と信じられていたというより、
知らない土地には思いもよらないものがあったり居たりするよ、
というたとえのひとつとして言われていたものです。
熊野は、蟻が群がってるみたいに参詣がつづくよ、みたいな俗諺もあるので
なんとなく蟻にしたんですかね?
かーとーこっちゃん、かとこっちゃん、「かとこ」さんです。
大陸にはいくつもバリエーションがござる
生物をとりつかせたり、とりついたりするという蠱(こ)の一ッで、
漢字で申すと「蝌蚪蠱」――「蝌蚪(かと)」は「おたまじゃくし」のことです。
これにかかってしまうと体が腫れて痛んだり、
口がものすごく渇いて水しかのめなくなったりします。
車などにつかうあぶら(車輪のすべりとかをよくするためのものでしょか)を
少しずつ服用させると、これにかかった患者さんは快復すると伝方されています。
同様のものに「蝦蟇蠱(がまこ)」があります。
おとっつぁんということですね。
水を欲しがる……という症状などを見ると
「すいこ」(水蠱)にも近いものかなぁ……とも思われます。
きれいなオイルをごっくごく。「しゆはつちゅう」さんです。
しばらくのあいだ大陸ものがごぶさたでしたので、ポイっと出して参りました。
漢字で書くと「あぶらをたしなむかみのむし」――「嗜油髪虫」と書きます。
人間のなかに、にゅわーーーん、と住みついて
油をいっぱい飲まないと体調が悪くなる症状を引き起こさせ、
そのひとに大量の油を飲ませるという虫。です。
体の中に入った毛髪が胃の中で変化して
これになると言われています。雄黄の粉末を飲めば体から出て来るソウナ。
髪の毛が変化をして体に変調を起こす虫になるという点では
「はつちょうちゅう」の一種に近いものです。コチラも油に関連があります。
ツノの上の争いではないです。「たにしがっせん」さんです。
いくさの勝ち負けをうらなったりするような要素も持ってたというもので、
ある程度の数(あんまり多いと大変だから、10~20くらいが妥当だろうネ)の田螺を
貝にしるしをつけるなどして半分半分にわけます。
これを容器に密閉しておのおのをこれから戦いのある軍勢に想定して
ワーーーーーーッと、戦わせるというもの。
ある程度たったころにパッと容器をあけてみて
軍勢の生存田螺の数がまさっていたほうの軍勢に「勝ち」の判断が出ます。
『日清戦争逸話』という本には、
西南戦争のとき、これをやって遊んだというひとが登場していますが、
どの程度コンナモノが実際におこなわれてたのかはあんまり知りません。
手足かくかく。「かにのよめさ」さんです。
越中の国の富山などに伝わるおばけで、
年を経た蟹が人間の姿に化けたもの。
「ごはんを食べないでよく働いて、うんこをたくさん出すお嫁がほしい」
という願望の男のもとに嫁にきて、そのとおりのお嫁におさまっていましたが
(「うんこをたくさん」というのは畑の肥料にするため)
ある日、夜中に起きて行く嫁をみつけた家族があとをついていくと
家の裏で、大きな業務用(野良仕事とかの)の釜でごはんを山のように炊いて
頭の上のくちから、こっそり大量のおむすびを食べてる姿が目撃されてしまいます。
このはなしは、ごはんを食べない女房の話のひとつで、
似たものに「くもにょうぼう」とかもいます。
富山にのこってるお話ですと、おむすびを食べていた所を見つかったあと、
そのまま家から追い出されてしまっておはなしはおわりになっていて、
男をさらったり、しょうぶの原に隠れたりなどの話がなかったりもします。
夏になったらきをつけよう。「うすひきばあさま」です。
讃岐の国の菅沢につたわるおばけで、
夏の土用のころに水辺に近づいたり泳いで遊んだりすると、
これが出て来てひっさらっていってしまうと言われています。
むかし、石臼をひきずりながら池に没したばあさまが、これになった
などの言い伝えが武田明などによって採取報告されてますが
なんで臼もってるのかはヨクワカンナイ感じです。
名前としても、かなりお近いかんじのする
佐渡の「うすおいばばあ」との関係は未詳ですが、
水辺に出て子供を取る(水あそびに対するいましめの意味としての妖怪ということ)
という点でみると、どちらかといえば、総州の「てながばばあ」とかに近いみたいです。
絵草紙&錦絵研究人
まんが描き
こっとんきゃんでい 主宰
山田の歴史を語る会 同人
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