▼秋のすねこすり愛護運動週間=おおぎり

足利幕府御憑総（おたのもそう）奉行支配下にあるすねこすり愛護職二名の者は、
交通安全運動週間にあわせて作られたすねこすり愛護運動週間のラストスパートとして
まだ残っていたポスターを貼りにまわっていたのですが、ひょんなことから
幕府御用達の発明家・狼久保教授から妙な新発明品をあずかって参りました。




【登場人物】


　膝薬師（ひざやくし）
　――御憑総奉行配下。膝の人面瘡のおばけ。

　臀之筋（でんのすじ）
　――御憑総奉行配下。でん部の筋肉のおばけ。

２名はすねこすり愛護職として、すねこすりの愛護、育成に関する業務ならびに
ひそかに世に暗躍しているという食用すねこすり密輸の徒を取締る役目を任じられている。


「まったく、あの狼ジジイ……、妙なもの持たせて……、
本当に愛護モービルの生みの親なのか？　あいつ。

「愛護モービルにつかわれてる、おぼろぐるまを七千倍のスピードで走らせる
ねりがらしは、あのおかたの発明なノダ。

「でもなぁ、これ……瞬間すねシャンプー製造機だっていうケド
どうみても見た目が洗濯機だからなぁ……。

「その洗濯槽みたいな所には何か入ってるノカ？


「なんにも入ってないよ。からっぽ。からっぽ。
――そもそも、どうすれば出来るかセツメイもしてないじゃないの、あのジジイ。

「お奉行におたずねすればわかるかノ。





「おい、臀之筋（でんのすじ）、お奉行、なんておっしゃってた？


「カクカクシカジカ。


「ただスイッチ入れるだけでシャンプーになるぅ！？　ホントに？


「わたりびしゃくに機械をつないで、スイッチを入れて……、
このツマミをひねって……、と。（カチカチカチチ）

「おおおおおおおおおおおおおおお、動いた！　動いた！！
でも、ほんっとに洗濯機の動きだぞ、このゴゴゴゴゴ音は。

「約２秒ですねこすり用のシャンプーが出て


「出てきた！　わッうわッ、出て来た出て来たっ！！


「おおおお、さすがの出来栄えなノダ。


「……ん？　でも、待てよ、これ……、（クンクン）
シャンプーじゃないぞ？　……冷たいし。

「あっ！！


「どうしたっ、いきなり平泉成みたいな声だして、


「うっかりしたノダ。シャンプーじゃなくて
おまけでついてるアイスクリーム精製の方のツマミをひねっていたノダ。

「なんで、そんな機能が附属してるんだよっ！！
じゃ、モクモク出て来たこれは……ほんとだ、アイスだ。

「もともともはアイス製造機だったのを改良した名残だそうなノダ。
寸法の関係でバニラの風味はしないただのミルク味なノダ。

「ん……でも、美味いな。あの狼ジジイ、腕はたしかだったんだな。


「こっちにツマミをひねれば、ちゃんとシャンプーが……


「まて。


「なになノダ？


「今日で運動週間がおわって、明日一日休暇になるじゃんか、
この機械でアイスをしこたま作っておいて、明日食おう。

「……。


「な？な？　ツマミはこっちに――（カチチチチチチ）


「あっ、そんなに回しちゃ、おうち用じゃなくて工場用レベ……！！！


「んに？


 

といった、ど派手なバボーンで
秋のすねこすり愛護運動喜劇、
ひとまずこれぎりーぃ。
カチカチカチカチカチカチ